------先ほどもお聞きした話と重なるところもあるかと思いますが、香菜子さんご自身で作品への向き合い方で、これだけは自分だけのものだなとか「意識して個を放つ瞬間」などポイントはありますか。アートの世界と言うと技術的な部分で新しいものというのは出し尽くされている、テクノロジーなどは日々進化していますけど、根源的な部分に関しては革新はないという見方がされるなど、自身の表現がシリアスに問われていくという段階にあるのかなと思うのですが、制作への向き合い方や意識して個を放つ瞬間があればお聞きしたいと思います。
絵画にしろ、ビジュアルデザインにしろ、新しい手法を見つけるのは本当に難しいというか、無理なのでは、、と思っているけれど、ではそこで自分は何ができるのか。何を表現しているかという意識や、意志の強さと言ったらよいのか、自分が感じたことを、考え膨らませ絵にのせることが大事かな、、、と
------ご自身の中にはっきりととした意味をもつ、という感じでしょうか。
そう、ちゃんと考える!自分で考えたものが表現できているのか・いないかという事が境目なのかなって思っていて。
ただ綺麗だから、美しいから、かわいいから、ではなく、何のためにとか、どういう意味合いで作品を制作するのかという事が、自分だけの表現に繋がるのかなと思います。
------何のためにやっているか、ですね
その絵の表現したい背景というものを、言葉にできるかできないかでも違うのかな、と思います。
私の作品、私を知らない方にとって、特に抽象画は何を描いているかわからない。っていうのは当たり前だと思います。
そういう方へ私自身が作品に対する意志を言葉で伝えることができて、さらにその方がどう感じた、絵がどう見えるのか。という流れが大切だなと。
その方がどう思ったか、それも一つの作品のストーリーだと思いますし、抽象表現を見る面白さなのかなとも思います。
------香菜子さん自身の香菜子さんだけの表現を大切にする、説明できるようにする。抽象作品と一口に言ってみてもそれによってより香菜子さんだけの表現になっていきますね。
やっぱり言葉で伝えるってことがすごく大事なんだってことをここ数年で感じました。
絵って多くは見て感じるものだとも思うのですが、見っぱなしにさせてしまうというのも違うのかなと。
作者の意志を知ることで、より深まった作品のイメージを想像し感じてもらえたら嬉しいです。
------最後に、これからの事ですね。妄想植物シリーズをキャンバスで作りたいという以前少し伺ったお話も含め、今後のアートへの取り組み方や目標などお聞かせください。
近いうちに以前からの妄想植物シリーズ(今までは水彩紙やデジタルでの表現)をキャンバスでの表現に変え制作していきたいなと思っていますが、さっきお話ししたようなインスタレーション的空間演出とか、違う表現の仕方なども、どんどんやっていきたいです!
それから、やはり先ほどのお話で、地域との関り合いだったり、子供たちの育成だったりとか……育成と言ってしまうと大層な感じがしますがそういった可能性を広げたいです。未来のある子供たちに想像力や感性の幅を少しでも広げてもらえるような機会をアートを通して届けられたらいいなと思います。
そして日本だけではなく世界に向けても、そういうことができたらと。
多くの方々に自分の作品を見て貰いたい、自分の絵を高めていきたい、という事はやりたい事というより、当たり前に私がやらなきゃいけない事ですね。
作品を描き続けるという事は大変なことだと思います。これから年齢を重ねていけば体も今までのように動かすことができなくなるだろうし。それでも、大変だけどやり続けることは当たり前で、私の人生だと思っているので、それは「やりたいこと」では無くて。「やること」なのかなと。
周りの人々、周りの未来、周り以外の広い範囲も、活性し心動くような絵を発表し続けて、たくさんの方と環境とも関わり合いながら色々なプロジェクトを作っていきたいです。
それがどんな相手か、事業のひとつなのか、社会のどの一部か、まだ具体的にはわからないけれど、世の中の未来が少しでもステップアップしていくようなものにしていけたら良いなと思っています。
このあとの人生での使命のような、絵を描くことの意味のような気がしています。
香菜子さんの作品への向き合い方や絵を描く意味、を思うと、世の中への、未来への、還元・貢献、そこに行きつく流れはとても自然に感じます。そうだよなぁ、そういう意識になっていくよなぁ、と。すごく納得です。
有難いです、そう言っていただけて。
今後も思考を止めず進み続けたいと思います。
聞き手・構成 ギャラリー・エデル
撮影 : 植村 忠透